R ETHICAL Journal エシカルジュエリーブランドを立ち上げたあの時

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皆様こんにちは。ジャーナルをお読みくださいましてありがとうございます。

今日は、エシカルジュエリーブランドを立ち上げた理由を、パーソナルな気持ちと一緒に、共有させていただこうと思います。

 

突然ですが皆様は、ジュエリーは、お好きですか?

シンプルな白いTシャツに、ゴールドのバングルで艶を足したり、ブラックリトルドレスに、ダイヤモンドの耳飾りを添えたり。

私にとって、ジュエリーは、日常の中にある、小さな芸術品だと思います。

そして上質な素材は、経年の劣化がなく、半永久的にそのまま美しいもの。

 

私はジュエリーが大好きです。

シンプルなお洋服でも、ジュエリーを一つ添えると、美しい雰囲気が生まれるような気がして。手元に輝くダイヤモンドを眺めると、その時々の想い出や、その時の気持ちが蘇るようで、宝物のように、歳を重ねるごとに、一つ一つジュエリーを集めています。

 

ジュエリーは、今日を煌めかせてくれる存在でありながら、次世代にも、その次の世代にも、永く受け渡していける喜びも内包しています。そんな存在は、装身具というジャンルの中で、唯一無二の煌めきを放つ存在ではないでしょうか。デザインの奥深さ、世界観の多様さも、古来より世界の人々を魅了してやまない理由でしょう。

 

私は、2012年にR ethicalブランドを立ち上げる前は、スイスジュネーブに本店を置くプライベートバンクの日本支社で、フィランソロピー(社会貢献)サービスを富裕層向けに提供していました。都心の高層タワーのオフィス、ラグジュアリーなスペースでハイスピードに意思決定がされていく環境の中で、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいました。仕事で訪れたスイスのジュネーヴを思い浮かべながら、日々、奮闘していました。

 

富裕層向けに社会貢献サービスを提供するにあたり、世界の貧困、人権の侵害、環境の汚染と、枚挙にいとまのない社会問題を網羅的に学び続けました。学生時代から、動物の虐待や搾取の防止を求めて、アニマルライツの活動していたこともあり、世界の問題を知れば知るほど、あまりに悲惨な環境、社会、人権の問題が溢れていることに気づきます。

 

改めて、自身が恵まれた環境で育ち、大学院まで教育を受け、そして人権が一定程度守られた場所で仕事をし、生きていることを、一つの小さな罪悪感とともに経験していきます。

 

ある日、映像資料の中で、アフリカのゴールド鉱山で小さな穴に潜り、泥に塗れてゴールドを採掘する子供の姿を目の当たりにします。丸い頭をした彼は、7歳くらいでしょうか。来る日も来る日も泥の中から砂金を求めて、暑く、劣悪な環境で働いていました。小さな体には堪えるであろう腰を曲げ、泥に塗れ、1日中働いても、手元に残るお金は僅かで、貧しさから抜け出すことはできません。学校へ通うこともできません。彼自身の気持ちに、丁寧に寄り添う人はいません。未来を描くこともできません。まるで何の権利もなく、ただそれしか道がないように、厳しい環境で、働いていました。何故か、その姿が頭から離れず、当時、一歳になる娘との姿が重なってしまって、夜一緒に過ごすときに、毎晩思い出す日々を送りました。

あんなに苦しい想いをしている子供がいるのに、私は何もしてあげられない。

清潔な布団で眠り、安全な暮らしをする私に、何ができるのだろう。

 

生まれたからには、人に愛され、守られ、そして栄養のある食事を食べ、教育を受け、幸せに生きてほしい。世界には、そういう根源的な母親としての想いすら届かない人々の暮らしがあって、同じ人間なのに、その不条理に、怒りとやるせなさを感じました。子供を育て、働く一人の母として、どうしたら良いのか、何を目指したら良いのか。自問自答する歳月を過ごします。

 

深く調べていくと、例えば、アマゾンで採掘されるゴールドは、違法採掘として、政府の目が届かず、大変脆弱なコミュニティに依拠します。違法採掘の背景では、マイノリティとして生きる先住民との衝突、強姦、迫害、殺人など、極めて厳しい人権の侵害が横行しています。また、世界にはゴールド鉱山で働く人は、3600万人いると言われていて、そのほとんどが貧困と深い関係があります。また、ゴールドの採掘には、安価で簡単な水銀が用いられることが多く、神経系への悪影響は想像を絶します。永続的に残り続ける環境の破壊も凄まじいものがあります。

 

複合的な課題に、エシカルな素材を用いるジュエリーブランドは、必ず解決策の一つになると確信しました。美しい循環を創造するという想いのもとに、よりダイレクトにサステイナブルな循環を軸にしたジュエリーブランドを創業しました。2012年のことです。当時、世界では、SDGsの考え方が生まれる前で、エシカルジュエリーブランドが欧米を中心に多く立ち上がっていました。また、既存の多くの方が知っている有名なメゾンジュエリーブランドも、その素材の調達をエシカルなものにシフトしていました。それは、世界のダイナミックなサプライチェーンへの注目と、必然的に押し寄せる時代の流れだったのだと思います。

 

フェアに対価が行き渡るフェアトレードの精神をもとに、素材を調達し、日本の職人にジュエリーへ仕立ててもらい、永続的に美しいジュエリーを、永く身につけてもらう。それ自体が一つの私自身への答えであり、自身の情熱を注いでいく一つのプロジェクトとなります。それがR ethical(アール・エシカル)が生まれた始まりです。

 

創業以来は、子育てとの両立で無我夢中でした。それでも、高いビルの一番上で、富裕層に向けてお金を運用していく仕事よりも、より直接的に経済にコミットしていけるブランドの運営が楽しくて、お客様と繋がる日々もありがたく、創業10年目を迎えることができました。ありがたいことです。

 

あの時、私の脳裏に焼き付いて離れなかった丸い頭をした泥水に潜る男の子は、今どこで何をしているのでしょうか。どのように成長しているのでしょうか。

常に、喜びに満ち溢れているだけのブランド運営ではありません。失敗も、不完全な想いも沢山ありました。ただ、その中でも、娘の存在と重なった、鉱山で働いていた小さな子供の苦しみを、一つでも二つでも取り除いていける可能性を信じて、今日もまた、エシカルなジュエリーをお届けしていこうと思っています。

 

きっと、一つの活動が、誰かの笑顔を生み出して、何かの解決に繋がっていく、そういうポジティブな循環を作っていける、そのことに誇りと想いを持って、次の10年へ歩んでいきたいと思います。

 

引き続きどうぞR ethicalをよろしくお願いします。

R ethical / Founder & Designer Mari Hoshi

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