R ETHICAL Journal 指先に合う、心に合う

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指にそっと触れるリングは、ただの装飾ではなく、日々に寄り添う小さな灯りのような存在だと思います。
それは、目立つためではなく、自分の内側にある静かな美しさを、そっと形にするものです。

リングを選ぶとき、私たちはよく「似合うかどうか」を気にします。
肌の色、骨のライン、指の長さ。
もちろん、それらは大切です。
けれど、本当に大切なのは、指を通したときに「呼吸が自然になるかどうか」だと思います。

リングは、心の速度と合っていなければなりません。
華やぐ気持ちの日には、光をよく含む石が似合います。
静かな朝には、金属のマットな質感がしっくりと馴染みます。
何かを守りたい時には、少し厚みのあるフォルムが安心をくれることもあります。

だから、鏡の前でじっと考え込むよりも、
指に通して、少し歩いて、光の下で眺めてみると良いのです。
屋内の灯りと外の柔らかな光とでは、リングの表情も自分の気持ちも少し変わるからです。

甲府の職人がつくるリングは、光を「強く見せるため」ではなく「やさしく通すため」に形づくられています。
角を丸く削るときのほんの一手間や、石座の高さをわずかに変える工夫。
それらは目立ちませんが、指に触れたときに感じる落ち着きとなって現れます。

そして、リングは時間と共に変化していきます。
金属は触れるほどに、肌の油分を吸って深い艶を帯びます。
小さな傷さえも、その人の日々の軌跡として美しく残ります。
だから、新品のときよりも、何年も何十年も過ごしたあとこそ、本当の姿が見えてくるのです。

リングを選ぶとは、「すでに完成された美」を手に入れることではなく、
これから先、一緒に育てていく相手を選ぶことです。
大切なのは、未来のあなたと馴染んでいるかどうか。

指にすっと吸い込まれるように収まるもの。
思わず、ふと見つめてしまうもの。
言葉にできないけれど、「ああ、これだ」と心が小さく頷くもの。

その瞬間に出会えたリングは、きっとあなたの一部になります。

どうか焦らず、ゆっくりと選んでください。
日々に溶け込み、あなたの呼吸と一緒に輝く、そんな一本に出会えますように。

R ETHICAL

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